
No.25
永瀬 伸子
データサイエンス学部 教授


2025年から基盤研究Cとして採択された本研究は、未婚男女の家族形成意欲の低下の要因を日本の働き方の変化とどうかかわるのかとからめて実証的に明らかにしようとするものです。
私の専門は「労働経済学」です。女性の働き方を研究してきました。ただし「生産活動」は、雇用労働に限られません。子育てや家事介護労働等も重要な「生産活動」の1つです。ただ女性が家事や育児だけをしたいのか、といえば、それだけでは「つまらない」と多くの女性が思うようになったのではないでしょうか。一方、幼い子どもの養育を社会の働く仕組みの中にうまく入れ込むのも容易ではありません。それをどう実現するのか、それこそが現代社会に求められる知恵であり、必要な社会制度変革でもあるでしょう。育児だけに専心するには、寿命は長すぎますし、また収入が足りなくなります。一方で、妊娠出産育児期は大きい個人差があります。それをうまく乗り切れる社会のサポートがあれば、多くの人が人生の充実した時期を安心して持てることになります。
日本の女性の働き方は今まさに変革の時期を迎えています。
45-50歳代以上の女性たちの多くは、男性が長期雇用、女性はパートで働くというようなパターンで生活をしています。女性が最低賃金に近いパート労働から抜け出しにくいのは日本的雇用慣行の特徴の1つです。正社員と非正社員とで労働市場が大きく分かれているのです。人手不足経済になってもなお、130万円程度での「就業調整」を解消するための明確な政策は打たれていません。
一方、30歳代の女性たちでは正社員で夫婦共働きというパターンが大きく拡大しています。ただそう容易なことでもなく、親同居の未婚者や、一人暮らしも増えています。
もっと若い20歳代の女性たちは、3人に1人は子どもを持たないかもしれない人生を見通すようになっています。こうした世代による変化の大きさは、欧米と比べても際立っています。
子ども希望の長期低落は社会を貧しくしていく可能性が高いでしょう。正社員と非正社員に分かれた日本の働き方に大きい課題があると私は考えます。日本的な二重労働市場に変化の兆しがあるのか、その解消に向けての政策を考えていくことも研究の重要な課題です。2024年に『日本の女性のキャリアと家族:雇用慣行、賃金格差・出産子育て』(勁草書房)をまとめました。これから先、日本的雇用慣行はどこに向かうのか、女性の視点で考えていきます。