研究課題
科研費

消費構造と家事労働に関する比較経済史的研究

研究代表者

谷本 雅之

社会情報学部社会生活情報学専攻  教授

研究種目
基盤研究(B)
研究期間
(年度)
2025年(令和7年)2028年(令和10年)
谷本先生

 


 経済史研究が「生産」面に集中し消費サイドの研究が不足しているとの指摘は、かなり前からなされており、近年は消費や生活を明示的に取り上げた研究は増加している。しかし消費や生活を経済史研究としてどのように位置づけるのか、その方法は必ずしも明示的ではない面がある。本研究は、近年の著作Industrious Revolution (邦訳『勤勉革命』)で、世帯経済を場として消費と家事労働の構造的な関連を歴史の場で明示的に議論したヤン・ド・フリースの枠組みを有力な参照軸とした上で、消費と家事労働の構造的な関係性に関する、より一般的な枠組みを、歴史の場での実証研究を通じて構築することを目的としている。
 本研究の第一の特徴は、消費行動の場としての世帯について、家族類型の視点を明示的に導入することである。経済学における家内生産論の想定する世帯は、breadwinner(一人稼ぎ)型の核家族世帯であり、その見方はド・フリースの議論にも持ち込まれている。しかしそれが一般的に当てはまるのは、歴史的には北西ヨーロッパに限られており、そこを離れるならば、20世紀半ば以降においても部分的であった。本研究では、20世紀後半以降盛んになった家族史研究の成果を意識的に受け継ぎ、相続にみる世代間の縦の関係や、家事労働の供給源となる家族の構成原理など、狭義の世帯論では抜け落ちる論点にも目を配り、世帯における消費と家事の構造的な連関と、その経路依存性について検討する。
 第二に、消費と家事労働との関連の変容を考察する上で、「技術」の問題を明示的に取り上げる。しばしば言及される家電製品の導入のほかにも、家事作業のスキル、住居等の家事労働の現場の改善・改良など、考察すべき範囲は広い。家政学等の知見を取り入れ、経済史における家事労働史の新たな展開を試みたい。
 以上のアプローチは、いずれも比較史の視点に立っており、それが本研究の第三の特徴である。前述したように、ド・フリースの定式化は、そのまま日本の事例に当てはまるものではない。差異をもたらす要因を腑分けするには、枠組みを共有した上での比較史的アプローチが有効となる。本研究では、それぞれ中国、イギリス、ドイツの社会経済史を専門とし、かつ消費史・家族史に研究実績のある5人の研究者を分担研究者としており、立ち入った比較史研究の準備が整っている。2025年7月には世界経済史会議(WEHC2025)で、本研究の構想に賛同した英・独・仏の研究者の参加も得て、キックオフとなるPanelを組織した。国際的な研究ネットワークとの連携も深めていきたいと考えている。

 

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