科研費その他
競争的外部資金の獲得支援事業

生成AIによる
「科研費申請書審査のシミュレーション」を利用して

大妻女子大学人間生活文化研究所
 特別研究員 牟田博光

 

 このたび薦められて生成AIによる「科研費申請書審査のシミュレーション」を利用してみた。科研費の申請書をAIに読ませ、架空の6名の審査員が評価項目(学術的重要性、研究方法、研究遂行能力、国際性、および総合判定)ごとに4段階で評点し、講評を付ける、という仕組みである。
 講評結果を一読すると、褒めてある講評もあれば、「何も分かっていないくせに失礼な!」というひどい講評もある。評点もひどく低い項目もある。ただ正直な所、弱点を遠慮なく突かれたようで気分が悪い。しかし、冷静に考えてみれば、審査員にはいろいろな人がいる訳で、厳しい、あるいは自分の立場から見れば気に沿わない講評や評点もあり得るだろうという理解にたどり着いた。自分が正しいとしても、それを専門外かもしれない審査員に十分理解し、納得してもらえるような、論理的で丁寧な書き方を工夫すべきだったのではなかったか、と反省した。
 私はコンサルタント会社に勤務している。コンサルタントの仕事は、官庁や団体が出す公示を見て、企画書を書き、入札に参加し、うまく受託できれば仕事がもらえ、それが給料に反映される。入札の際の値段はもちろんだが、企画書の内容も例えば、業務実施の基本方針、業務実施の方法、要員計画、作業計画、業務主任者としての経験、といった視点で発注元の複数の評価者から評点される。評価項目と配点は公表されている。審査項目は違うが、仕組みは科研費の申請書審査と同じである。科研費は取れなくても、研究費がもらえないだけで、生活には困らない。しかし、コンサルタントは企画書が通らなければ給料がもらえない。真剣度が全く違う。そのため、現在では、企画書を書くと、AIに様々な観点から評価してもらい、それを参考にして企画書を書き直して精度を高めることがどの会社でも普通に行われている。
 もちろん、AIなんて、と毛嫌いする人もいる。しかし、競争相手がAIを使って精度の高い企画書を作っている以上、こちらも使わないと、仕事がもらえず、ひいては生活ができない。
 科研費の申請も同じだ。もちろん、申請書を書いて誰かに意見を求めることぐらいは誰でもがやっていると思う。しかし、准教授、教授と大学の中での地位が上がっていくに従って、回りの人間は忖度して本当の意見を言わなくなり、最後には結構です、としか言わない。科研費の申請が落ちれば、審査員が分かっていない、と原因を審査員のせいにしてお終になる。しかし、AIは忖度をしない。AIを毛嫌いせずに上手に付き合い、ずばずばと率直に意見を言ってくれる仲間にする方が得だ。ただ、AIは使い方(仕事の頼みかた)がなかなか難しい。申請書を読ませてこれはどうだとだけ聞いても望む答えは返ってこない。例えば、「評価の観点を示し、400字で講評を求め、修正点を聞く」、といった質問の工夫をしなければならない。しかし、答えは普通一通りだ。今回使ったシミュレーションは、上手な使い方が組み込んであるようで、視点が違う6人の審査員の眼でそれぞれがいくらか異なった講評を返してくれ、改善点を提案してくれるので便利だ。申請書を読ませ、講評をもらい、書き直し、また書き直した申請書を読ませて書き直し、を繰り返し、多くのAI審査員から高い評点、良い講評をもらえるような申請書になれば、科研費が通る可能性も非常に高まると思われる。申請書の競争力を高めるため、是非次回の新しい科研費申請時に使ってみようと考えている。

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