巻頭言
巻頭言

研究論文を書くということ

 コロナ禍の影響で、2020年度は様々な活動が中断した。私の研究活動も半年ほど遅れた感がある。論文作成も手がつかなかった。その中で、「なぜあなたは論文が書けないのか(佐藤雅昭著、メディカルレビュー社)」を読み、反省をした。佐藤氏は、「論文をキャリアアップの道具とだけ見ていたのでは、だんだんその作業は空しくなる」と述べている。大学教員生活の一部を費やして行った研究が日の目を見ないのは、実にもったいないことと思うようになった。
 授業が始まると論文作成作業の時間がなかなか取れない。しかし、論文を作成しはじめると単純作業が多いことに気づく。そこで、単純作業と知的作業を切り分けて、細切れの時間で作成するようにした。科学論文の場合、方法と結果をまず先に書く。これでしばらく放っておいてもすぐに作業開始できる上、結果を客観的に見直せる。序論と考察はどちらを先に書いても良いが、いきなりパソコンの前に座っても進まない。まずは、どういう順番で研究の意義や結果をアピールするか決める。ストーリーができあがったら、引用する文献を選ぶ。結果の解釈が合致する論文や異なる論文をピックアップして下書きとして残す。日常より論文は読むべきであるが、なかなかそうはいかない。そこで、関連する論文はトピックス毎にパソコンに保存しておき、この時に再度読み直して引用する。英語論文で注意する点は、最終的に論文に仕上げる場合は、過去の論文をそのまま引用しないことである。多くのジャーナルは剽窃チェックソフトにより過去の文章と一致するフレーズは盗用の疑いがあると警告してくる。自分の過去の論文を引用しても同様である。
 最後に佐藤氏の言葉、「論文を書くことが無駄と思えるなら、スパッとやめてしまおう。無駄ではないと思えるなら前向きにがんばろう」を引用して閉じたい。教育と研究の大妻を目指して、次年度は投稿論文が増えることを期待する次第である。

家政学部 教授

青江 誠一郎