特別研究員

日本に在住する外国人の子供の特別支援教育に関する研究

大妻女子大学人間生活文化研究所 特別研究員
山梨大学名誉教授
元大妻女子大学教授
鳥海 順子

鳥海順子

 大学院修了後、保育者養成に携わり、教員養成(特別支援学校教諭)を経て、再び大妻女子大学の保育者養成に従事するという幸運に恵まれた。長きにわたる教員生活の中で、私の専門である障害児教育では2007年に特別支援教育が始まり、大きく様変わりした。特別支援学校等の特別な教育の場だけでなく、通常のクラスにおいても個々の教育的ニーズに応じた適切な教育が求められるようになり、多様な子供たちとの共生が重要な課題となっている。多様な子供たちの中には、障害のある子供だけでなく、帰国子女や外国人の子供等も含まれ、後者の子供たちもまた特別な支援を必要としている。少子高齢化の日本は深刻な労働力不足を解消するために、外国人労働者の受け入れ拡大を図ってきた。この6月にも外国人が日本で長く働き続けられる「育成就労」制度を新設する「出入国管理法」の改正が成立した。在留資格の中には、在留期間の上限がなく、家族の帯同が認められるものもある。法務省の統計によれば、昨年6月現在の在留外国人数は3,223,858人と過去最高を記録し、コロナ下で一時減少したものの、在留外国人数は10年間で1.6倍になった。在留外国人の増加に伴い、今後も家族として来日したり、日本で誕生したりする外国人の子供たちの増加が予想される。しかし、現状では外国人の子供の教育は十分に行き届いていない。外国人の子供たちの保護者には学校教育法第16条等による就学の義務は課されていないが、就学を希望する場合には、国際人権規約等により公立の義務教育諸学校において無償で教育を受けさせることができる。外国人の子供の教育について憂慮すべき問題として、学齢期にある外国人(約132,000人)の1割が不就学者であること、特別支援学級の在籍率が日本人の2倍超という調査結果がある。グローバル化社会や共生社会を目指す我が国が外国人の子供たちの教育にどのように取り組むべきか、実態を踏まえながら研究を進めていきたい。

 

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