No.23
卒業論文は、シェイクスピア作『ソネット詩集』を中心に、シェイクスピアが人生と愛をどのように歌っているかを論じましたが、大学院に入って、シェイクスピア研究者がどれほど数多くいるか、そしてその方々を凌駕するような論文が書けるのか思い悩み、そこから逃げるようにして、シェイクスピアと同時代人で、英米では盛んに研究されているにもかかわらず、日本人研究者の数が少ないサー・フィリップ・シドニーの研究へと方向転換して、修士論文では、シドニーの代表作『アストロフェルとステラ』を論じて以来ずっと、基本的にシドニーと彼の同時代の詩人たちを研究してきました。
またシェイクスピアに関しては、劇作家としてよりはむしろ詩人としてのシェイクスピアに関心を寄せ、詩人シェイクスピアを論じ、彼の詩集を翻訳・解釈してきました。
最初の勤務先であった和歌山大学教育学部にいた頃、たまたま運よく、新しく出来たばかり制度である「文部省若手在外」研修員に選ばれ、一年ほどケンブリッジに滞在したことが:契機となり、ケンブリッジのシドニー研究者に手ほどきを受け、その後、シドニーの諸作品を日本語に本邦初訳し、「サー・フィリップ・シドニーと同時代の詩人たち」と題した博士請求論文を大阪大学に提出し(文学)博士号を取得して、今日に至ります。この間、二つの国立大学教育学部、二つの公立大学文学部、五つ目の大妻女子大学文学部で合計45年間教鞭を執り、「イギリス文学・文化」について教えてきました。
73歳になり、老いたりといえども、心身共に健康を維持すべく努め、まだその第一巻しか出していませんが、ライフワークである《シドニー著作集全四巻》と『新訳シェイクスピア全詩集』を完成すべく、努力邁進するつもりです。