特別研究員

AIーDX時代の新・資本主義社会における女性のあり方

大妻学院 前理事長
大妻女子大学 前学長
大妻女子大学人間生活文化研究所 特別研究員
花村 邦昭

花村邦昭先生

 AIーDX時代の到来でみなが知識・情報を自在に使いこなせるようになれば社会は “リゾーム状ネットワーク社会” へ、すなわち「中心もなく、始まりも終わりもなく、すべてがリゾーム(根茎)状に結ばれ合う非線形複雑適応系社会」へと変貌します。そこでは、旧来の「要素還元主義発想に立脚する機械論パライム」に代わって、すべてを「動態的生成変化の相において捉える生命論パラダイム」へと、パラダイムシフトが起こります。
 その新たな世界理解の下では、これまでの「貨殖資本主義」(知識情報を囲い込んで目先の利益をもっぱら追求する資本主義)は、「公共文化価値創成」資本主義(知識情報を「社会的共通資本」(宇沢弘文)として公共の「利」に資せしめることが利益の源泉となり目標ともなる新・資本主義)へと遷移します。そこでは、<自分は何を以って他者を「利」せんとするのか>、が改めて各人に問われます。
 資本主義の発祥がキリスト教ピューリタン倫理によって支えられたように(ウェーバー)、これからの「公共文化価値創成」の新・資本主義はこの「利」行倫理によって支えられます。互いが「利他」行を以って「共生」し合う人間本来的在り方への本源還帰です。そういう意味でいまわれわれは歴史的転換期を生きていると云えます。
 「生命論パラダイム」に立脚する「生成論的世界理解」、「利」行倫理に基づく「公共文化価値創成」、これらはいずれも無自覚的ではあっても日本女性によって表徴されてきた歴史的に貴重なあり方です。当面する課題は、それを日常的実践にどう結びつけるかですが、その点に関して私は人間生活文化研究所特別研究員としてこれまで『女性が輝く時代 「働く」とはどういうことか』、『働く女性のための <リーダーシップ>講義』、『“やまとをみな”の女性学』、など7冊の本を書いてきました。いまは『リゾーム状ネットワーク社会をどう生きるか』の新たな1冊に挑戦中です。

 

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