研究課題
共同研究プロジェクト

デジタル技術を活用した大妻女子大学博物館所蔵資料の整理・活用

研究代表者

青木 俊郎

博物館 学芸員

研究年度
2020年(令和2年)

課題番号 :K2013

 

 本研究は、大妻女子大学博物館が所蔵する資料の整理および公開・活用について、デジタル画像や3次元データ等の利用により新たな手法を開発するとともに、博物館業務の省力化・合理化を研究するものである。

大妻学院旧校舎軒瓦3次元モデル画像

 近年、Virtual Reality (VR)・Augmented Reality (AR)など、デジタル技術を活用した文化財の活用が、埋蔵文化財領域を中心に広がりつつある。その中でも、フォトグラメトリと呼ばれる、複数の写真を合成して資料の3次元モデルを生成する手法が多く採用されている。
 今回、このフォトグラメトリが、大妻女子大学博物館にも応用可能かどうかを検討した。具体的な作業としては、所蔵資料の全方位撮影を行い、その画像データをソフトウェア(Agisoft Metashape)で統合することで3次元モデルを生成した。掲載した写真は、大妻学院旧校舎軒瓦の3次元モデルである。
 従来、資料管理用として撮影する画像は、一方向から撮影したものであり、複雑な形状を持つ資料の全体像は1枚では表現しきれない。そのため、資料の全体像を把握するには、最低6方向からの撮影画像を見比べながら自身の頭の中で再構成するしかない。しかし今回作成した3次元モデルは、360°の回転および拡大・縮小表示が可能であり、全体像の把握が容易である。また質感や色彩、小さな傷なども緻密に再現できており、写真以上の情報量があることから、資料管理上非常に有用である。加えて、資料閲覧の代替手段として用いることで、資料劣化の防止にもつながる。
 今回の検証により、資料の3次元モデルは、資料管理用データとして十分に利用可能性があることが判明した。ただし、適切なデータ精度、撮影時間の短縮、資料を傷めない適切な撮影方法などについては、さらなる研究が必要である。
 今後も、豊富な情報を持つ3次元モデルの生成・利用・公開が博物館標準の作業となるよう、引き続き研究していきたい。