研究課題
共同研究プロジェクト

汎用版避難所運営訓練システム開発の研究

研究代表者

田中 優

人間関係学部 教授

研究年度
2020年(令和2年)

課題番号 :K2011

 

 近年の災害対策や防災においては、従来の各種施設・構造物などのハード面における防災を基礎として、加えて、人々の平常時からの備えや心構え、つまり、ソフト面の防災が重要視されている。ソフト面の防災、すなわち、人々の防災への意識や行動を高めることを目指して、様々な防災教育や訓練がおこなわれているが、未経験の災害を想定する難しさや、受動的な関わりが、訓練を形式的なものにしたり、誤った防災意識に繋がる可能性があり、ソフト面の防災の難しさが指摘されている。
 ソフト面の防災の難しさに対して、松井ら(2005)1)は、被災時に地域住民や災害ボランティアが主体となって行う活動に焦点を当てた防災シミュレーションゲーム(訓練)である「広域災害における避難所運営訓練システムSTEP(Simulation Training system for Earthquake shelter Program)(以下STEP)」を開発した。
 STEPは、阪神・淡路大震災の避難所運営に関する一連の調査(松井・水田・西川,1998)2)に基づいて開発されているが、その後、新潟・中越地震、東日本大震災などの地震災害、あるいは、豪雨災害、台風など、様々な災害が、日本のあらゆる場所で多発している。そこで、本研究では、様々な被災状況に対応でき、さらに、実施が容易な汎用版STEPを開発することを目指している。
 汎用版STEP開発のために、2019年度には、大妻女子大学の教職員を対象にした防災研修において、被災時に直面する問題が異なる、都市部(千代田校)と郊外部(多摩校)の各キャンパスで、それぞれ異なるエピソードを防災担当職員と共同で検討したSTEPを実施し、プログラムの作成過程、STEP実施時、そして、実施後の参加者への効果測定から、汎用版STEP開発の十分な可能性を確かめることが出来た。
 2020年度は、①汎用版STEPプログラムを作成する際のベースとなる従来版STEPを、多様な災害や被災状況に対応可能な”架空の小学校での避難所運営をシミュレーションする”「STEP BASIC」として完成させる。②STEP BASICを元にした汎用版STEPを試行する。③汎用版STEPの普及を進める。の3つの手順により、汎用版STEPの開発をおこなう計画であった。しかし、新型コロナウィルス感染症の流行により、コロナ禍でのSTEPの実施が難しくなり、また、避難所運営におけるコロナ対応という新たな問題も浮上した。現在は、これまでのデータ分析の見直し、文献、学会参加等による、最新の情報収集等から、今後の研究への準備と検討をおこなっている。

 

1) 松井豊・竹中一平・新井洋輔・水田恵三・西道実・清水裕・田中優・福岡欣治・元吉忠寛・堀洋元(2005). 広域災害における避難所運営訓練システム(STEP)の開発過程と効果検証,筑波大学心理学研究,第30号,pp. 43-49.

2) 松井豊・水田恵三・西川正之(1998).あのとき避難所はー阪神・淡路大震災のリーダーたち  ブレーン出版

 

関連リンク

– 災害援助研究会「STEP(広域災害における避難所運営訓練システム)」Facebook
https://www.facebook.com/STEP.saigai.enjo/

 

学生・教職員を対象にした防災訓練におけるSTEPの様子(大妻女子大学多摩キャンパス・2019年12月5日)