研究課題
科研費

ミャンマー連邦共和国基礎教育学校における平等性と卓越性に関する実証研究

研究代表者

牟田 博光

人間生活文化研究所 特別研究員

研究種目
基盤研究(C)
研究期間
(年度)
2021年(令和3年)2023年(令和5年)

 

 

 

 50年間にわたる軍政から民政移管された2011年以降、ミャンマー連邦共和国では国際水準の教育をめざした大規模な教育改革が進行した。アウンサンスーチー氏が率いる2016年の本格的な民主化政権の誕生によってその動きは加速化された。具体的には、従来1年から11年までの11年制だった基礎教育課程をKG(幼稚園課程)+1年から12年までの計13年制へと2年間延長し、それに必要なカリキュラム改革、施設設備の拡大、教員養成校の4年制化、教員数の増大等をはかろうとしている。まさに、明治期の学制改革、戦後日本の教育改革に匹敵する一大改革である。
 2012年から2014年までの間実施された包括的教育セクターレビュー(CESR: Comprehensive Education Sector Review)を経て、国家教育セクター計画(NESP: National Education Strategic Plan)が作成され、2016 年から2020 年まで5 年間実施された。
 基礎教育の拡充は「誰も取り残さない:Leave None behind」キャンペーンのもと、僻地での学校創設、進級制度の改善による退学率の減少、学校昇格による上級学級の創設などの施策により、児童生徒数は拡大を続けた。また教育の質を向上させ、「国を豊かにする21世紀にふさわしい教育」を子供達に与えるため、教育制度改革に合わせ、2016年から国際水準のカリキュラム改訂を初等教育、中等教育と同時並行で進め、2021年からは全ての学年で新カリキュラムによる教育が実施される予定である。
 全国レベルでは、教育の拡充、新カリキュラムの導入は順調に進んでいるように見える。しかし、現実には様々なグループ間で就学や学力の格差が大きくなっているのではないかと危惧されるが、グループ間格差については、データの制約が大きく、研究がほとんどない。

 本研究はミャンマー連邦共和国の地域別、個別学校別情報を時系列的に得て、社会経済情報なども組み込みんで、教育の量、質に関するデータを平等性と卓越性の観点から再分析することで、2011年の民主化以降の教育政策の成果を平等性、卓越性の観点から評価するとともに、今後の政策課題を明らかにする事を目的にする。

 2020年度はコロナ禍によりほとんどの基礎教育学校は閉鎖され、2021年2月にはクーデターにより民主化政権は崩壊した。しかしそれまでの実質9年間にわたる教育改革の成果を詳しく検証することは、歴史的にも、また今後の展望を得る上でも貴重な資料になると考えられる。

 

researchmap

CONTENTS