研究課題
科研費

ミャンマー連邦共和国における民主化政権の教育遺産とその継承に関する研究

研究代表者

牟田 博光

人間生活文化研究所 特別研究員

研究種目
基盤研究(C)
研究期間
(年度)
2024年(令和6年)2026年(令和8年)
牟田博光

 

 ミャンマー連邦共和国において民政移管された2011年以降の教育改革は、具体的には、従来5才で就学し16才で卒業するGrade-1からGrade-11までの11年制だった基礎教育課程を、5才で幼稚園課程、その後6才のGrade-1から18才のGrade-12までの計13年制へと2年間延長し、それに必要なカリキュラム改革、施設設備の拡大、教員数の増大をはかろうとした、まさに、明治期の学制改革、戦後日本の教育改革に匹敵する一大改革であった。
 多くの国際機関・ドナーを巻き込んで、2012年から2014年までの間実施された包括的教育セクターレビュー(CESR)を経て、国家教育セクター計画(NESP)が作成され、2016年から2020年まで5年間実施された。
 基礎教育の拡充は「誰も取り残さない:No one will be left behind」キャンペーンの下、僻地での学校建設、進級制度の改善による退学率の減少、学校昇格による上級学級の創設などの施策により、児童生徒数はコロナ禍前の2019年度までは一貫して拡大し続けた。また教育の質を向上させ、「国を豊かにする21世紀にふさわしい教育」を子供達に与えるため、基礎教育制度の実質13年制への改編に関連して、教員養成校の4年制化などの総合的教育改革を実施した。併せて、2016年から国際水準のカリキュラム改訂を初等教育、中等教育と同時並行で進め、2023年度からはGrade-12が新設され、全ての学年でJICAとADBが支援した新カリキュラムによる基礎教育が実施された。2024年にはこの新カリキュラムを学習した高校生が大学に進学することになり、それに併せて大学のカリキュラムも新しくなる。
 こうして2011年度以降の教育改革の努力は全国レベルでは、一見順調に進んでいるように見えたが、2021年に突然起こったクーデター後の社会的分断によって、現実には様々な問題が生じた。
 本研究はミャンマーの10年間にわたる民主化過程における諸政策、及びそれらがもたらした遺産としての成果を整理することを第一の目的とする。さらに、それらの成果のうち何が現政権下も継続されているか、あるいは、現在は継続されていなくても、将来再び継続される可能性があるかについて分析する。それらの分析に基づき、2011年の民主化以降の教育政策の成果(遺産)を評価するとともに、その継承について、今後の教育政策課題を明らかにする。

 

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