No.22
坂田 哲人
家政学部児童学科 准教授
近年の保育分野(業界)では、痛ましい事故や、はたまた保育者(※幼稚園教諭や保育士等の総称)の不適切な関わりや虐待の問題などが報道される機会も多く、園の運営や保育者の専門性に強い関心が寄せられているといえます。その背景には、保育者不足や、業務過多、直近では感染症対策などもあいまって、現場が疲弊しているといった状況も併せて報告されており、批判の言葉も多くありながらも、同情や励ましの言葉も寄せられています。
しかし、これらの問題がこのままでよいということでは決してなく、対策や対応が考えられ、実際に施策に移されている状況でもありますが、本研究は、その一角にアプローチをするものであります。
問題への対策としては、「保育者不足の解消(保育者のなりてを増やす)」、「配置基準の見直し(保育者と子どもの割合を変える)」業務の効率化(ICTやAIを活用して業務を減らしたり、自動化したりする)」などが目下検討されていますが、これらの対策の共通点は、人の数や、業務の量、時間の確保などといった「量的な側面での解消」を目指したものだということです。
一方で、保育職は免許・資格を必要とする専門的な仕事(専門職)であるということを鑑みると、量的な側面での解消は必要条件ではあるものの、本来的には「専門性の高さによって問題に対処していく」ことが望まれるところであります。
仮に大人の人数が増えたとしても、子どもに対する考え方や見方、あるいはその実践技術が向上しなければ、また同じ問題が繰り返される可能性があります。PD(Professional Development)の考え方では、こうした個々の専門性に着目して、その向上の過程を通して実践の質を高めていくことが目指されます。
そこで、本研究ではこの保育者の専門性にとりわけ着目し、昨今の保育分野における課題の解決の方向性として、保育者の専門性開発(向上)(Professional Development)の観点からアプローチを試み、その糸口を探ります。専門性開発という考え方は、広くはマネジメント・経営学分野からも参照されるものです。マネジメント分野の中でも特にミクロ組織論の領域に「組織開発」や「人材開発」といった類似の概念もあり、それを専門職性の高い(個々の技量や実践に依存することが多い)領域へと範囲を広げていった概念だといえます。