研究課題
科研費

児童生徒の心停止の救命率改善に向けた疫学研究:網羅的データベースの構築と分析

研究代表者

清原 康介

家政学部食物学科 准教授

研究種目
基盤研究(C)
研究期間
(年度)
2024年(令和6年)2027年(令和9年)
清原康介先生

 

 学校で発生する児童生徒の心停止は社会的なインパクトが大きく、その救命率の向上は公衆衛生上の重要な課題である。本研究では、日本全国の学校で発生した児童生徒の心停止事例を網羅的に捉えるデータベースの運用と分析を通じて、救急対応の現状と問題点を明らかにし、実効性のある対策立案に役立つエビデンス構築を目指す。
 我々は、2017-2019年度基盤研究C(17K09132)および2020-2023年度基盤研究C(20K10537)において、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付データから心停止事例を抽出し、総務省消防庁の全国救急蘇生統計と結合することで、児童生徒の全国的心停止データベース『Stop and Prevent cardIac aRrest, Injury, and Trauma in Schools(SPIRITS)』を構築・運用してきた。我々はこれまでに本データベースを活用し、学校における児童生徒の突然死予防に貢献しうる様々な知見を生み出してきた。しかし、長期間の症例の蓄積が必要な課題や、他データとの結合が必要な課題については未着手のままであった。今回の研究では、SPIRITSのデータベースに新規データを追加し、また他のデータと連携を図ることで、これまでに明らかにされてこなかった課題の解決を目指す。具体的なテーマとしては、気象条件や環境汚染物質と心停止の関連性の検証、アナフィラキシーショックの発生と対応の実態、新型コロナウイルス感染症の拡大時期における心停止発生状況の実態、および運動中の心臓震盪の発生状況とその後の生命予後についての分析を行う予定である。
 本研究は、救急医療の現場で即座に活用可能な知見を提供し、学校における救命教育や危機管理プログラムの改善に直結する成果が期待できる。また、将来の蘇生ガイドラインの改訂において、本研究で得られたエビデンスが重要な根拠として活用されることが予想される。学校で発生する児童生徒の突然死は、地域社会に多大な影響を与える我が国の重要課題であり、本研究結果がもたらす社会的な波及効果は大きいと考える。

 

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