No.22
石井 雅幸
家政学部児童学科 教授
我が国の学校教育は、大きな転換点を迎えていると言われています。ところが、若手教員の急激な増加と教員不足によって教員の授業力の低下などが問題となっています。そうした中で、世界的にも大きな学びのあり方の転換が求められています。学びの本質は、もっている「知(知識)※ここでは知と知識を同義語として扱うことにしました」を転移させて新たな「知」を自ら創りだしていくことであると言われています。そこで、本研究は、『子供は、いかなる「知識」を転移させ新たな「知識」を創る学びを算数・数学や理科で行っているのか。こうした学びを行う上で、算数・数学や理科においてはどのような基盤となる「知識」を転移させているのかを明らかにすること』に取り組むことをねらっています。
前述しましたように、個々の子供がもっている「知識」を転移させて新たな「知識」を創り出していく学び観への転換が学校教育には求められ、子供はいかなる「知識」を転移させて学びを創り上げていくのかを明確にする必要があります。
具体的には、国際調査の対象となる小学校、中学校の算数・数学科と理科の学習における児童や生徒が転移させる基盤となる「知識」を対象とし、次の3点に取り組みます。①算数・数学の「数と計算」及び理科のエネルギー領域での個々の子供がもつ基盤となる「知識」を想定し指導展開を組み、その展開に沿った授業を行っていきます。②その中で想定した「知識」を子供は、転移させて新たな「知識」を創り出す学びを行うかを検証していきます。③このような個々の子供がもつ基盤となる「知識」を紐解きながら、最終的に算数・数学の「数と計算」並びに理科のエネルギー領域における基底となる「知識」を明らかにしていきます。なお、本研究では、算数・数学教育と理科教育の専門性を踏まえた教科教育研究を行っている研究者、大学において現場の実践を支える研究を推進している研究者を共同研究者としています。また、小中学校の現場で授業を実践されている教員の方々のご協力をいただきながら研究を進めていきます。
本研究を通して、学習指導要領の算数・数学や理科の学習内容の見直しへの一つの提言ができればと考えています。また、学校現場の該当教科の授業改善のための方策を提案できればとも願っています。