研究課題
科研費

資源不足が集団内葛藤・集団間紛争を引き起こすメカニズムの解明

研究代表者

竹部 成崇

文学部コミュニケーション文化学科 専任講師

研究種目
若手研究
研究期間
(年度)
2024年(令和6年)2027年(令和9年)
竹部 成崇

 

 2016年にアメリカで反移民を掲げるトランプ氏が大統領選に勝利し、世界各地でも極右政党が躍進したように、社会ではしばしば自集団の中に存在する異質な人々を排除しようとする風潮が強まります。こうした傾向は様々な摩擦を引き起こす可能性があり(e.g., Erlich et al., 2021)、実際に暴動が増加したという報告もあります(e.g., Middlebrook, 2017)。
 従来の研究はこうした現象の背後に資源不足の影響があることを示唆しています。例えば、失業率が高まると、人々は移民受入に対して否定的な態度を持つようになることが示されています(McGinnity & Kingston, 2017; Wilkes & Corrigall-Brown, 2011)。私自身はこれまでの研究で、資源不足はゼロサム信念(「誰かが手に入れると誰かが失う」「全体のパイは決まっている」という考え)の高まりを介して外国人労働者などを排除する意図を高めることを示しました(※ただし、手法によっては異なる結果が得られたため、このプロセスの証拠はまだ十分とは言えません)。これらの研究は、人は資源不足時には内集団の範囲を狭めて異質な他者を排除したいと願うという実態や、その心理プロセスを明らかにしようとしています。
 他方で、資源不足が社会でしばしば生じる暴動のような「集団内葛藤」や、より大きな「集団間紛争」まで引き起こすかは未解明です。攻撃は対象から報復攻撃される危険性を伴うことを考慮すると、内集団の範囲を狭めたいという欲求が高まったとしても、それが直接的に攻撃を促すとは考えにくいです。資源不足はどのようなメカニズムで集団内葛藤や集団間紛争を引き起こすのでしょうか。これが本研究の核心をなす問いです。
 本研究ではこの問いについて、関連研究や論理的考察を基にした仮説モデルを立案し、それを検証する複数の実験を行っていきます。本研究は、資源不足が集団・社会に及ぼす影響に対する理解を深める研究ですが、問題が生じるメカニズムの解明は問題の改善・予防の糸口となるため、現実社会で生じる暴動や紛争の改善・予防の糸口となる研究としても位置づけられると考えています。

 

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