研究課題
科研費

障害や困難を抱えるこどもの声を聴くための早期ダイアローグに関する研究

研究代表者

高橋 ゆう子

家政学部児童学科 教授

研究種目
基盤研究(C)
研究期間
(年度)
2024年(令和6年)2026年(令和8年)
高橋ゆう子

 

 「こども政策決定過程におけるこどもの意見反映のプロセスの在り方に関する調査研究」(2023年3月)に示されたプロセスの全体像には、意見反映の前に意見聴取の段階が設定され、調査結果のまとめとして「声をあげにくいこども・若者から意見を聴く工夫や配慮事項」、「聴く側の体制の在り方」が今後、取り組むべき課題とされました。
 声をあげにくいこどもの、意見としてすぐにはまとまらない声にいかに耳を傾け、声を聴くか、そして聴いてもらえる環境を整えるか、意見反映のプロセスがスムーズに行われるためには、事前準備や意見聴取に関する工夫や聴く側の姿勢についての検討が重要です。これまでの実践研究から明らかになったことは、保育者や教師は、障害や困難を抱えるこどもに寄り添おうとして、その声を聴くよりも、こどもの困り感を推測し、客観的な評価に基づいて支援しようとする姿勢が強いこと、つまり、こどもを「声をあげる存在」として、対等に向き合うことに慣れていないことです。また、障害や困難を抱えるこどもたちも、声をあげたり耳を傾けてもらったりする経験が少ないということです。だからこそ、意見を形成する多様な声(多声性)や声を発せる安心な場(対話空間)、「傾聴され、応答される」という対話性について検討することが求められます。
 本研究では、「こどもの意見の政策への反映までのプロセス」のうち、「意見反映」以前の「声を聴く」プロセスを検討することを目的とします。声をあげにくいこども、特に障害や困難を抱えるこどもの声を聴くため、フィンランドで開発された、早期ダイアローグ(以下、ED)を実践します。EDは、教育や福祉の現場でできるだけ早い段階で協力関係・体制を構築し、支援のための共同作業を進める方法です。まず、こどもの意見、声を聴く前の事前準備として、こどもに関わる大人が、EDを通して「声を聴いてもらう」「声にする」体験をすることの意義を検討します。このことは、こどもを「意見を表明する権利のある存在」として認め、大人と同等の立場であるという認識につながります。次に、「意見聴取」となる「こどもの声を聴く」ためのEDを実施し、その効果を検討します。最後に、EDの進行にあたってはファシリテーターの存在が大きいので、その役割の特徴や在り方を検討します。
 本研究の成果は、こどもに関わる大人を支え、障害や困難を抱えるこどもの声に耳を傾けるという意見形成支援と声を聴く文化の醸成が期待できると考えています。

 

researchmap

CONTENTS