特別研究員

現代社会におけるメディア融合と情報の偏在性・偏在性に関する知識社会学的アプローチ

大妻女子大学人間生活文化研究所 特別研究員
大妻女子大学 名誉教授
炭谷 晃男

炭谷晃男先生

 今春に大妻女子大学を定年退職して、大妻女子大学人間生活文化研究所の特別研究員を拝命する名誉に恵まれました。これまでの自身の拙い研究を継承発展させていきたいと考える。
 社会構築主義理論は、人間の知識や現実は自然に存在するものではなく、社会的相互作用を通じて構築されるとする立場である。この理論の到達点は、「現実」や「真理」が固定的・客観的なものではなく、歴史的・文化的文脈の中で形成されるという視点を提示し、科学、教育、メディア、ジェンダーなど多様な分野に応用された点にある。とくに、言語やコミュニケーションが現実構築の中心的役割を果たすことを明らかにし、権力関係や支配構造の分析にも貢献した。
 吉田民人教授による社会情報学の理論は、情報社会における人間行動や社会構造を理解するために、情報の流通・共有・解釈の過程を重視するものである。彼は、メディアやコミュニケーション技術が個人の認識や社会的つながりに与える影響を理論的に整理し、「意味の共有」と「社会的構築」の視点から、情報の社会的役割を解明した。また、情報の受け手が単なる受動者ではなく、能動的な意味形成者であることを強調し、情報環境と主体の相互作用に注目した。
 しかし,現代の情報社会はAI革命を経過して新たな地平に立っている。AI が人間の知的活動を補完・代替し、社会の仕組みや仕事のあり方を根本から変える時代の転換点にあります。その中で吉田理論は具体的な社会問題への応用が難しいとの指摘がある。また、情報格差、プラットフォーム資本主義やテクノ封建制など、現代の情報社会が抱える権力構造の分析が十分でないという批判もある。実証的研究との接続が弱い点も課題とされ、理論と現実の架橋が求められている。中範囲理論ではないが、理論構築と具体的社会問題の実証的調査との架橋的研究を目指したいと考える。

 

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