研究課題
共同研究プロジェクト

大学退学についての基礎的研究(その3)

研究代表者

矢野 博之

家政学部 教授

研究年度
2020年(令和2年)

課題番号:K2023

 

 本研究は、三か年の一連の〈大学における退学〉調査研究の一環となる。高等教育論×(教育社会学+臨床心理・学生相談)という学際的・複合的なアプローチによるプロジェクトである。いずれも共同研究プロジェクトに採択され、平成30年度採択研究「その1(過年情報に基づく休学退学動向の統計分析/大学関係者への聴き取りの予備調査)」、令和元年度採択研究「その2(在学生への任意質問紙調査)」に続き、令和2年度は「その3」として、大学関係者(学生相談担当者や学生指導に直に当たる教職員)への聴き取り調査を企図した(*但し、COVID-19禍に伴い、被験者への依頼や承諾、アクセスともに難航し、現在も調整および一部実施に留まっている)。
 調査(その1)から、本学(=発表・公開時には“調査対象校”で表記)の退学傾向は、退学率1.0~2.0%と比較的低く、また下降傾向で、比較的“穏やか”であるため、早急な対策や措置を要さないとみなせる一方、従来は休退学の一大要因と一括されてきた「進路問題」が本学でも大きい反面、具体的特定の変更先をもたない“熟考”型へと変質しその比率が増している点を注視すべきと指摘した。さらに調査(その2[発表準備中])から、休退学に至る、あるいはそれを“留める”内的要因としての人間関係(学友や教職員)について、その意味づけ方やありようがこれまで以上に問われることを突き止めている。一連のプロジェクトの諸調査は、相互に結果を対照し、補完的に計画し実施しているが、こうして導かれた退学問題についてのとらえ直しから同問題に“現場で”当たる教職員への聴き取り調査で現状認識や経験知化していることの証左を得ようというのが本研究(その3)である。
 本研究(その3)の経過報告としては、COVID-19禍の影響により対学生の通学や学修へのケアやフォローが新たな具体的措置や対応体制として急を要している言及が目立ち、休退学の問題認識も新たな局面に入りつつある現状が見える。“新入生への配慮”という社会論調が過剰気味ななか、“密”を拒まざるをえない大学教育において、通学修学の持続・保証という視点で学生対応の実情から紐解く途上にある。
(注:一連の研究は、退学事象を、絶対悪とし忌避する立場ではなく、あくまでも学術的な視線下で、個々の学生の進路等意思決定を最大限尊重しながら、大学教育自体への自省的・建設的な見直しを趣旨とする立場をとる)