シリーズ「特別研究員(Senior researcher)-研究成果の紹介」2

『言論統制というビジネス』
戦時期の言論空間を検証

大妻女子大学人間生活文化研究所
特別研究員
里見 脩

 【著者より】満州事変から日中戦争、太平洋戦争の敗戦に至る時期は、「戦時期」と呼称されます。拙書は、この時期の「言論空間」を検証したものです。

 戦時期の言論空間について、従来の研究は、軍部が主導する国家が自由な言論を抑圧した、つまり軍部を「加害者」、新聞を「被害者」とする史観で捉えてきました。  しかし弾圧は存在しましたが、そうではない事実も数多く存在します。新聞は「報道報国」という、報道を通じて国に尽すと言うスローガンを掲げました。それは国家が強制したものではなく、新聞側の自発的なものです。ステレオ・タイプな史観では、実相は把握できません。新聞側に、戦争を「ビジネス・チャンス」と捉える「新聞資本主義」と言う営利意識が存在したことは、重要な点です。執筆に際しては、「事実に語らせる」という事実の提示を心掛けました。

書名:
言論統制というビジネス
ー新聞社史から消された「戦争」
(新潮選書)
著者:
里見脩
ISBN:
978-4-10-603871-6
里見 脩(さとみ しゅう)

大妻女子大学人間生活文化研究所特別研究員、平成31年3月まで大妻女子大学文学部コミュニケーション文化学科教授、専門はメディア史。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得満期退学、学術(社会情報学)博士。主な著作『新聞統合』(勁草書房)、『ニュース・エージェンシー 同盟通信社の興亡』(中公新書)、『岩波講座「帝国」日本の学知』第4巻(共著 岩波書店)、『メディア史を学ぶ人のために』(共著 世界思想社)、『情報がつなぐ世界史』(共著 ミネルヴァ書房)など

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