特別研究員

非線形偏微分方程式で可積分系な
微分方程式の研究

大妻女子大学人間生活文化研究所 特別研究員
大妻女子大学名誉教授
肥川 隆夫

肥川 隆夫


 物理に力学という分野があります。力学ではニュートン方程式から全ての結果が導かれます。ニュートン方程式は「力=質量×加速度」という式で、「\(F=ma\)」と書いてあります。この式から全てが導けるようには思えないのですが微分を導入すると理由がわかります。時間\(t\)とともに変化する位置を\(x\left( t\right)\)と書くとき、その微分は\(v\left( t\right) =\dfrac{dx\left( t\right) }{dt}\)と書きます。\(v\left( t\right)\)は速度です。速度も時間の関数ですので微分を考えることができて\(a\left( t\right) =\dfrac{dv\left( t\right) }{dt}\)となります。\(a\left( t\right)\)は加速度です。以上二つの式から\(a\left( t\right) =\dfrac{d^{2}x\left( t\right) }{dt^{2}}\)と書くこともできます。これを用いるとニュートン方程式は\(F\left( t\right) =m\dfrac{d^{2}x\left( t\right) }{dt^{2}}\)と書くことができます。このような式を微分方程式と呼びます。1変数の関数の微分を常微分、2変数以上の変数の関数の微分を偏微分と呼びます。上記ニュートン方程式は常微分方程式で積分を用いて解きます。力の例として質量\(m\)の物体の重さ\(mg\)を考えるとニュートン方程式は\(g =\dfrac{d^{2}x\left( t\right) }{dt^{2}}\)となります。積分すると\(v\left( t\right) =gt+v\left( 0\right)\)、更に積分して\(x\left( t\right) =\dfrac{1}{2}gt^{2}+v\left( 0\right) t+x\left( 0\right)\)を得ます。高校の物理の教科書では解法は述べずに結果のみが公式として載っています。微分積分を導入しないために、公式がどうして出てくるかはわかりません。ニュートンは力学を作るために微分と積分という数学を作り力学を記述しました。それを無視すると一つの式から全ての結果が導けるという科学の成果が全く理解できません。
 万能と思えた力学も20世紀になり適応限界があることがわかり、微細な世界では量子力学、広大な宇宙では相対性理論に取って代わられました。量子力学ではシュレディンガー方程式、相対性理論ではアインシュタイン方程式という偏微分方程式が現れます。一般に偏微分方程式は解けません。私はアインシュタイン方程式をはじめとする偏微分方程式をどう解くのかの研究を行っています。

 

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