研究課題
科研費

メディア経験・実践論に基づくメディア記憶の構築過程の分析と太平洋戦争の記憶

研究代表者

佐藤 信吾

社会情報学部 専任講師

研究種目
研究活動スタート支援
研究期間
(年度)
2023年(令和5年)2024年(令和6年)

 

 

 

 人々がメディアを通じてどのような経験を積み重ね、どのような実践を展開しているのか。メディア経験論やメディア実践論と呼ばれる一連の議論を踏まえながら、集合的記憶の構築過程を考察するのが本研究の目的である。まずロジャー・シルバーストーンやニック・クドリィらのメディア経験・実践論、そしてメディア文化論の知見と、モーリス・アルヴァックスが創始し、ピエール・ノラやアライダ・アスマンらが発展させてきた集合的記憶論を架橋することで、現代のメディア社会における集合的記憶の構築過程を理論的に考察する。ソーシャル・メディアが日常に浸透している現代では、人々が意図せずに様々なメディア経験・実践を積み重ね、過去の出来事のイメージが絶えず構築されている。本研究は、こうした状況を踏まえたメディア論と記憶の社会学の双方の理論的発展に寄与することを目指す。
 上記の理論的な分析に加えて、本研究ではアジア・太平洋戦争の記憶の日本社会における構築過程を分析する。1945年から80年が経過しようという現代においても、「戦後」という時空間は日本社会に浸透している。この記憶の枠組みのもとで、人々がどのようにアジア・太平洋戦争を想起し、集合的記憶として構築しているかを分析する。ジャーナリストがマス・メディアを通じて構築する記憶と、市民がソーシャル・メディアを通じて構築する記憶は対象や眼差しが大きく異なる。これをメディア・テクノロジーやメディア文化、さらには職業規範といった多様な視点から論じるのが本研究の中心である。さらに日本社会に閉じた視点だけでなく、東南アジアやオーストラリアといった国々の人々がアジア・太平洋戦争の記憶をどのように構築しているかを対照させることで、日本社会の特徴を炙り出していく。このために、フィリピンやオーストラリアといった、これまでアジア・太平洋戦争の記憶という文脈では不可視化されてきた国々の研究者とも連携していく。

フィリピン大学のリカルド・ホセ教授(フィリピン近現代史)との交流

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フィールドワークで訪れている知覧特攻平和会館の全景

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