シリーズ「特別研究員(Senior researcher)-研究成果の紹介」4

『Building Inclusive Education in K-12 Classrooms and Higher Education: Theories and Principles』
『Developing Inclusive Environments in Education: Global Practices and Curricula』
       ~Inclusive Education の実現を目指して

大妻女子大学人間生活文化研究所 特別研究員
大妻女子大学名誉教授
東京都立大学名誉教授
生田 茂

生田 茂

 アメリカの出版社である IGI-Global から 2019 年に出版した Handmade Teaching Materials for Students With Disabilities が「Best-Selling Book from Asia」として,「Regional Quarterly Review for Asian Researchers」の中でスペインの研究者の推薦文入りで紹介されました。また,「EDUCATION TITLES RECOMMENDATIONS」の This Week’s Featured Books の中でも「Hear From the Editor」「Hear From an Expert」のコメントと写真入りで紹介されました。
 そして,この度は,東洋大学の是枝先生,筑波大学の柘植先生,そして,アメリカ の Elizabeth Dalton とスウェーデンの Linda Ewe と編集した,次の2冊の本を上梓することができました。
・Building Inclusive Education in K-12 Classrooms and Higher Education: Theories and Principles
・Developing Inclusive Environments in Education: Global Practices and Curricula
 この本作りは,Inclusive Education に関する理論や世界各国の取り組みの最新の動向を1冊の本にまとめることを目指して始めました。Chapter paper(章論文)の提案を受け付け,それぞれの提案の採否を判断し,本論文の投稿を依頼,そして,投稿された論文の査読を依頼,査読結果を踏まえて改訂を依頼,再送されてきた論文の掲載の最終判断をする,という1年2ヶ月に及ぶ息の長い取り組みでした。世界中から55本の章論文の提案があり,その中から44本の提案を採択し,最終的には30本の章論文の掲載を認めました。当初は1冊の本作りとして始めた取り組みでしたが,予想を遥かに超える章論文の採択となり,理論と実践の2冊に分けて出版することとなりました。
 アメリカとスウェーデンの研究者との共同作業でもあり,時差や言葉の「問題」だけでなく,研究者の専門が少しずつ違うこともあり,査読結果の判断や再提出された論文の採否,採択を認めた30本の章論文をどのように2冊に分けるかなど,シビアな議論が続き,全体の調整役として苦労することとなりました。(今や,楽しい思い出でもありますが。)
 これらの2冊の本の30章の論文は,世界19カ国の研究者によって執筆されており,Inclusive Education の最新の理論や世界中の取り組みの動向を知る上で大変貴重なものとなっています。世界中の研究者や学校の教員,政策決定を行うスタッフに広く読まれることを願っています。

 

Book 1Building Inclusive Education in K-12 Classrooms and Higher Education: Theories and Principles

book1

 

Book 2Developing Inclusive Environments in Education: Global Practices and Curricula

 

Best-Selling Book from Asia

 

This Week’s Featured Book

 

 

Building Inclusive Education in K-12 Classrooms and Higher Education: Theories and Principles

Book:
Building Inclusive Education in K-12 Classrooms and Higher Education: Theories and Principles
author:
Kiyoji Koreeda, Masayoshi Tsuge, Shigeru Ikuta, Elizabeth Minchin Dalton, Linda Plantin Ewe
ISBN:
978-1-668473-70-2
生田 茂(いくた しげる)

大妻女子大学人間生活文化研究所 特別研究員,東京都立大学・大妻女子大学名誉教授,東北大学理学研究科博士課程修了(理学博士),東京都立大学では,理学部,教養部,理学研究科,工学研究科と渡り歩き,この間ネットワークを活用した地域コミュニティ「多摩未来」を主宰,「三宅島と多摩を結ぶ会」代表,東京都立大学附属学校長を務め,筑波大学に誘われる。筑波大学では,附属学校教育局に勤務し,附属学校回りをしているときに,「発語のない児童が朝の会で司会をやれるようにしたい」「絵と文字と発音を学ぶ教材を作りたい」などと相談されたことがきっかけで,特別支援教育に関わり始める。本学の社会情報学部に勤務中は,ゼミ生とともに教材を手作りし学校に通い続けた。こうした教育実践の論文が SITE (Society for Information Technology and Teacher Education) 2020 で数百の論文の中から5本選ばれた Outstanding Paper Awardに輝いた。現在も全国の学校の先生と共に ICT を活用した取り組みを行っている。

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