巻頭言
巻頭言

人間とAIとの協調

 人工知能の活用が広がっていますが、 昨年はDiffusion Modelとよぶ新しい技術の出現により、アートや音楽などのクリエイティブ分野でもAIが使用されるようになりました。この技術は、膨大なデータで学習しておくことにより、少ない情報を与えるだけで、不足している情報を補完して一貫性のある情報を生成します。例えば、「草間彌生の画風でハワイの海岸を描いて」というテキストを入力すると、それらしい絵を生成します。これは既にある情報を検索するのではなく、新しいデータを生成するという点で革新的です。この例ではテキストから画像を生成しますが、音楽、3Dモデル、プログラムなどを生成するツールなども既に作られています。
 そして話題のChatGPTとよぶツールは、数行のテキストを入力すると、500字程度の文章を生成します。これは教育に影響を与えています。大学ではレポート課題を出題しますが、学生がAIを使ってレポートを作成してもそれがAIによるものか分かりません。ニューヨーク市教育局では、管轄する教育機関のPCからのChatGPTへのアクセスを禁止したそうです。とはいえ、個人の端末から使用できますので無駄な抵抗です。本学でもレポートを対面実施の試験に変更する必要がありそうです。また、就活においても、会社名と自分の特技などを入力すると会社の特徴と自分の特徴を踏まえてうまくアピールする志望動機を生成します。近年、企業側もエントリーシートの採点にAIを活用しているそうですので、AI同士の評価になり、何のためのエントリーシートかわからなくなりそうです。
 今後、同様のことが様々な場面で起こり、人間とAIとの協調が重要な研究課題となるでしょう。倫理的問題、プライバシー、著作権など、人間生活文化研究に関わる課題も次々と生まれています。実は、この巻頭言の一部もAIによって生成していますが、大丈夫でしたでしょうか?

社会情報学部長 藤村考

大妻女子大学社会情報学部 学部長

藤村 考