研究課題
科研費

オーストラリア⽂学は英⽶でどう受容されたのか?ー 19世紀末から20世紀初頭まで

研究代表者

加藤 彩雪

比較文化学部 専任講師

研究種目
若手研究
研究期間
(年度)
2022年(令和4年)2026年(令和8年)

 

 昨年度、比較文化学部に着任いたしました加藤彩雪と申します。D. H. ロレンスをはじめとする20世紀初頭のイギリス文学や、オーストラリア文学を中心に研究をしております。科研費への挑戦は自分にはまだ早いと思いながらも、「長期的な目標」を持って研究をすることへの憧れから、若手研究への応募を決心しました。1つの大きな体系をなすような研究を目指したいという意欲が高まったのが2021年でした。

 私が若手研究を通して形にしたいと考える大きな体系とは、19世紀末から20世紀初頭において、オーストラリア文学がどのような関係をイギリスやアメリカの作家や一般読者と取り結んでいたのかということを明らかにさせることを意味します。私は博士論文で、イギリス人作家D. H. ロレンスのテクストにおけるオーストラリア人作家ヘンリー・ローソンの影響について考察しました。その後の研究で明らかになったのは、イギリスでは好意的に受け入れられたローソンのテクストが、同時代のアメリカでは注目されていなかったという事実でした。世紀転換期において、オーストラリア文学はイギリスで出版された後、ロンドンの出版社を介して、アメリカの出版社の手に渡るのが一般的でした。多くのオーストラリア人作家のテクストがアメリカで出版されていたにもかかわらず、ローソンのテクストは大西洋を渡ることができなかったのです。この事実に、私は非常に興味を持つようになりました。そこで、オーストラリア人作家のテクストの英米における受容を比較考察することを若手研究のテーマに選びました。南半球の側から北半球の文化的諸相を照らし出すこの作業は、南半球という視点の弱い北米のモダニズム研究に新しい方法論を提示することにつながるのではないかと考えています。文学研究に自身が「どのように貢献できるのか」ということを意識したとき、この課題に取り組むことが私自身の責務であると感じました。

 初めて科研費に応募するにあたり、人間生活文化研究所や研究支援室の皆様には、非常に細やかにご指導していただきました。心より感謝申し上げます。採択していただいた課題に対して、丁寧に取り組んでいこうと思っております。

 

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