研究課題
科研費

読解を経由する記述力向上プログラムの実証的研究

研究代表者

樺山 敏郎

家政学部 児童学科

研究種目
基盤研究(C)
研究期間
(年度)
2022年(令和4年)2024年(令和6年)

 

 国際的な学力調査として認知されている経済協力開発機構(OECD)実施の生徒(高校1年生対象)の学習到達度調査(PISA調査)並びに我が国の学力調査として継続し実施されている全国学力・学習状況調査(小学6年生と中学3年生対象)において、記述力に係る課題が再三にわたって指摘されている。これらの調査は、国や地域、学校における児童生徒の学力の状況を把握することに主眼が置かれ、その結果は平均化した数値として総括され、学校教育における指導改善に活用されている。

 

 文章の読解を経由する記述とは、平易に換言すると「読んだ(理解した)ことを書く(表現する)こと」である。出口となる記述を阻んでいる要因は、読解力不足によるものであることは容易に推察できよう。では、文章の内容をどこまで、どのように理解しようとしているか、それをどのように書こうとしているか、書こうとしたものは完結できているかなど、実際の記述式問題の解答の際に働く、読解を経由する思考・判断・表現のプロセスを明らかにする研究は管見の限りでは見当たらない。

 

 こうした状況を踏まえ、代表者は2007年から2017年にわたる10年間分の全国学力・学習状況調査の記述式問題全部の正答率や誤答傾向に注目し、その状況を分析した(「小学校国語科教育における記述力に係る現状と展望」、大妻女子大学人間生活文化研究、No.31、2021)。本研究は、そこで得た知見を基にし、文章を正確に読み解き、目的や所与の条件等に応じて的確に記述する、「読解を経由する記述力」の向上を図る具体的な手だてを実証化して示す目的がある。

 

 記述力は、国語科の枠組みを越え、他教科等をはじめとする実生活に生きて働く、極めて重要な汎用的能力である。また、その向上を図ることは国内外の学力調査への対応をはじめ、学力に関わる試験がコンピュータを使った方式(CBT)へ移行している時勢においても重要な価値がある。タイピングによる解答はキーボード操作等のひと手間がかかり、鉛筆による記述と同様とはいえない側面をもつが、記述という形式として捉えることはできる。我が国のPISA調査におけるCBT対応の遅れが指摘される中、読解を経由する記述力の向上を目指す研究実践は喫緊の課題といえよう。

 

 本研究(2022-2024)は、小学校段階における記述力向上プログラムの開発を図り、それを研究対象の小学校で試行し実証することにより、その成果を広く波及させていくことを企図している。我が国の読解を経由する記述力向上の地平をひらくことに貢献したい。

 

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