研究課題
科研費

経験的概念としての「ポジショナリティ」の発展的研究

研究代表者

池田 緑

社会情報学部 准教授

研究種目
基盤研究(B)
研究期間
(年度)
2021年(令和3年)2024年(令和6年)

 

 

 

 本研究は、2018〜2020年度の基盤研究(B)「経験的概念としての「ポジショナリティ」の実証的研究」を発展的に継続するものとして計画されました。ポジショナリティは、帰属集団の間に権力関係が存在し、その権力関係が個人の関係性においても権力作用を及ぼすような社会的局面の機序を分析する概念です。性差(ジェンダー)や人種・民族問題、障がい者問題、性暴力(および被害者支援)、などの様々な社会的関係において注目されています。
 たとえば、善良な男性でも、性差別関係においては差別者というポジショナリティを有していて、女性に対して特権的で抑圧的な立場にあります。そのことを忘却して行動するならば、無意識に女性を傷つけることが起こり得ます。逆にポジショナリティに意識的であれば、そのような無意識的な差別を回避可能になります。ポジショナリティに対して無自覚であることが、本人の意図や善良さとは関係なく、齟齬や係争の原因となり得ます。「女の人も社会進出を頑張ってください。応援していますよ」などと男性が言えば、「他人事な応援ではなく男性自身が女性進出を妨げている原因を解消しろ」と感じる女性もいるでしょう。これは典型的なポジショナリティにかかわる齟齬です。
 2018年度の科研では、日本と沖縄の関係、ジェンダー(DV含む)、外国人問題を中心にアンケート調査と聞き取り調査を行い、事例を精査することからポジショナリティが問題となる社会的場面について分析を行いました。それらの調査結果の一部は本年3月に国際学会でセッションを立ち上げて報告も行いました。今回の科研では、これらの領域に新たに先住民族、障がい者問題、子育て支援などの家族関係の論点も加え、ポジショナリティが問題となる社会的局面を総合的に調査します。聞き取り調査に加えてネットを用いたアンケート調査を引き続き行い、さらに韓国でもアンケート調査を行い国際比較も行う予定です。
 とくに、人々がポジショナリティを拒否する機序を、被投性(状況に投げ込まれているという感覚)、リベラリズム、道徳的個人主義、という観点から調査し、ポジショナリティについての共通認識を、人々が共有するための道筋を探ります。それがポジションを超えた、差別や権力関係を解消する協働に繋がるからです。これらを代表者1名、分担者10名、協力者3名の計14名の研究組織で行います。その成果は国際学会やシンポジウムで社会に還元される予定です。

 

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