特別研究員

アートを通した持続可能な発展のための教育の
実践と研究


大妻女子大学人間生活文化研究所 特別研究員
元大妻女子大学教授
金田 卓也

金田先生

 これまでの私の研究と実践は、大学院時代のネパールでのフィールドワークを出発点としている。大学院では、学校教育と村落地域の造形文化を対象に、自然素材を生かした造形活動の教育的意義を探った。学校教育では十分に実践されていない造形活動が、村落地域では土壁、儀礼、生活と結びついた造形文化として息づいていた。タライ平原の先住民タルーの村の土壁レリーフは、土地の素材、信仰、共同体の記憶を担う表現でもあった。
 この研究は、造形教育における土着的伝統や自然素材の意味を問うものであったが、大妻女子大学に着任し、保育者・教育者養成に関わる中で、その問いは子どもの生活、地域文化、国際理解、平和教育へと広がった。とりわけ人間生活文化研究所との関わりによって、私は、従来の美術教育の枠を越え、グローバルな視点で人間の生活文化と持続可能な発展を結びつける課題として捉え直すようになった。
 その具体的な実践のひとつが、子どもたちが平和をテーマに大きな絵を共同制作するキッズゲルニカ国際子ども平和壁画プロジェクトである。さらに近年は、果樹植樹をランドアートと結びつけた、ネパールのムラバリ村でプロジェクトを進めている。竹の集会所、土の壁画、ウコン染めの布づくり、果樹の苗の植樹などは、村の生活と持続可能な発展に関わる協働的な学びの場である。大学院以来の「土地に根ざした造形」への関心は、大妻での教育実践と研究を通して、アートを通した持続可能な発展のための教育へとつなげることができた。
 現在も、これまで大妻で培ってきた教育研究の経験を生かし、アート・プロジェクトのさらなる発展を試みている。4月には、ネパールでの活動をSirjana College of Fine Artsとの共同研究へとつなぐ可能性を探り、6月には南イタリア・カラブリアの過疎化が進む共同体でのアート・プロジェクトを計画中である。こうしたアートを通しての国境や世代を越えた新しい関係を築いていきたいと考えている。

 

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