研究課題
科研費

保湿によるかゆみ緩和の機構と衣服への応用

研究代表者

水谷 千代美

家政学部被服学科

研究種目
基盤研究(B)
研究期間
(年度)
2026年(令和8年)2028年(令和10年)
水谷 千代美

 


 数年前に、肝臓癌を患った高齢の知人からかゆみに苦しんでいることを知らされた。その方は、かゆみにより眠れない、かゆみは痛みよりも辛いと訴え続け、我々が評価した機能性ウェアのかゆみ緩和効果を試してみたいという意向であった。この機能性ウェアを着用した結果、かゆみが治まったということであった。なぜ、このような現象になったのかを解明したいということで本研究がスタートした。
 一方、近年、地球の温暖化問題が深刻化し、繊維・アパレル業界は環境汚染産業2位で、製造時に発生する二酸化炭素を削減する方法を再考し、不要となった衣服ごみをリサイクルするなどの必要性に迫られている。そのような中で、我々は天然物であるでんぷんが原料で、微生物により最終的に二酸化炭素と水に分解される特性、いわゆる生分解性を持ち、焼却時に二酸化炭素排出量が比較的少ないポリ乳酸繊維に着目した。ポリ乳酸繊維は天然保湿因子である乳酸を含む。天然保湿因子は元々皮膚の角質細胞内に存在し、皮膚の水分バランスを保ち、水分を抱え込んで保持する機能や皮膚を守るバリア機能に欠かせない役割をもつ。しかし、これらの機能が低下すると乾燥したり、異物が入りやすいため刺激を感じやすくなる。これらのことから、ポリ乳酸は地球にやさしく、皮膚の保湿効果があり、乾燥によるかゆみの緩和が期待できる。
 高齢者は皮膚の乾燥が起因とするかゆみに苦しんでいる。角層で生成されるタンパク質であるフィラグリンは、皮膚のバリア機能と保湿を担う成分であるが、年齢に伴ってフィラグリンの減少により皮膚が乾燥し、かゆみを発生することが考えられる。本研究は、皮膚の乾燥によるかゆみに対して薬剤を使うことなく、衣服によって保湿してかゆみを緩和することを目的とする。
 日本は、2024年(令和6年)で65歳以上の人口は約3,624万人、総人口の約3割が高齢者となっている。この割合はさらに上昇し、2070年には国民の約2.6人に1人が65歳以上になると推計され、日本の高齢化はますます加速することから、高齢者の人口の増加とともに皮膚の乾燥が起因とするかゆみを訴える人が多くなることが予想される。本研究の成果により、衣服を着用することによってかゆみが緩和され、高齢者の生活の質が向上することを切望する。

 

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