研究課題
科研費

プログラム学習中における生成AI の利活用の有無が
前頭極皮質の賦活に与える影響

研究代表者

本郷 健

人間生活文化研究所 特別研究員

研究種目
基盤研究(C)
研究期間
(年度)
2026年(令和8年)2028年(令和10年)
本郷 健先生

 

 コレージュ・ド・フランス教授でNeuroSpin所長のStanislas Dehaene は、ヒトが進化の過程で環境から情報を最大限に引き出す四つの主たる機能が現れたとし、これを「学習の四本柱」と呼んだ。脳という基盤にあるこの基本的構成機能(注意、能動的関与、誤りフィードバック、定着)を生かすことが学習の成立に極めて重要であると主張している。プログラムを学ぶ学習者は、この四つの機能を強制的にしかし自然に短時間のうちに凝縮した形で駆使することを要求される。このことからもプログラミングの学びを探ることは、一般的な学習研究のフィールドとして魅力的である。
 近年、学校教育でも生成AIの利活用が積極的に進められている。その一方で、教育への利用の在り方に警告を鳴らす研究成果も多く報告されている。例えば、2024年6月、MITの研究チームが明らかにした認知負債(Cognitive Debt)という現象は、世界中の研究者に衝撃を与えた。認知負債とは生成AIを使い続けると、私たちの脳の活動が著しく低下する現象であり、学びと生成AIの関りを探る上で興味深い話題である。
 さて、本研究は筆者らが先行研究として進めてきた「コンピュータプログラミング学習の神経基盤に関わる基礎研究」(2018年~2022年 科研費・課題番号18K02589)を、生成AIを利活用する実際的な教育研究へと発展させるものである。先行研究では、前頭極皮質は目的志向の持続性の基礎を形成し、行動の概略的制御にとって重要であると考えられている。我々の先の研究成果はこの汎用的な問題解決能力を支える神経基盤の一つである前頭極皮質や淡蒼球がプログラミングの学習により有意に変化することを明らかにした1)。教育的な視点から非常に興味深い。
 この成果を受け、本研究では前頭極皮質が、生成AIの利活用の有無や活用方法の違いによってどのような影響を受けるかを明らかにし、生成AIを活用した学びや指導が課題解決能力の育成にどのように寄与するかを、脳活動データを根拠に明らかにしようとするものである。脳活動データの取得は教育実践に近い状況でもそれなりに測定が可能と考えられるNIRSを利用する。そこで得た知見をもとに、生成AIを活用したプログラミング学習の効果的な学習環境構築へ、延いては一般的な学習を考察する基礎資料を提供しようとするものである。

1) Takeshi Hongo, Takao Yakou, Kenji Yoshinaga, Toshiharu Kano, Michiko Miyazaki, and Takashi Hanakawa. Structural Neuroplasticity in Computer Programming Beginners. Cerebral Cortex. 2022, 33(9), p.5375-5381,
https://doi.org/10.1093/cercor/bhac425, (accessed 2026-6-1)

 

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