
No.26
小関 右介
家政学部ライフデザイン学科 教授


生物多様性は、社会経済活動を支える自然資本の基盤であり、持続可能な社会の実現を支える不可欠な要素です。2023年に国が策定した『生物多様性国家戦略 2023-2030』では、生物多様性の損失を気候変動と並ぶ世界的危機と位置づけ、種多様性だけでなく種内の遺伝的多様性の維持・回復を重要な目標として掲げています。
しかし、種多様性と遺伝的多様性というマルチレベルの生物多様性を広域にわたって大規模に評価する調査やモニタリングの枠組みが確立されているとはいえません。そうした方法論的枠組みの確立は、生物多様性の現状や変化を把握し、有効な保全策を立案するために必要不可欠です。
このような背景から、本研究は環境DNA分析に基づく広域スケール・マルチレベル生物多様性評価手法を構築し、その有効性を野外生物群集で検証することを目的としています。環境DNA分析は高感度かつ高効率な調査を可能にする一方、分析過程でエラー配列が不可避的に生じます。そのため、とくに1〜数塩基の変異を扱う遺伝的多様性の評価では、得られるデータの正確性が大きな課題となっています。この課題を克服するため、本研究では、前身の科研費研究で開発した配列フィルタリング法(gmmDenoise法、Koseki et al. 2025)を用いて佐渡島全島スケールの河川性魚類の種多様性および遺伝的多様性を高精度に評価し、環境DNA分析に基づく広域スケール・マルチレベル生物多様性評価手法の有効性を実証することを目指します。本研究で得られる広域的かつ種網羅的魚類多様性データは、単なる多様性パターンの記述にとどまらず、その形成プロセスを解析するための大規模かつ高解像度なデータセットとなります。本研究では、このデータセットに対してメタ群集アプローチを適用し、離島の魚類多様性の形成プロセスを明らかにすることを目指します。以上のとおり、本研究は広域スケールにおけるマルチレベル生物多様性の評価と多様性形成プロセスの理解を支える方法論的基盤の構築に貢献すると期待されます。