
No.26
池田 緑
社会情報学部社会生活情報学専攻 教授


本研究は、同じく基盤研究(B)「経験的概念としての「ポジショナリティ」の実証的研究」(2018〜2020年度)および「経験的概念としての「ポジショナリティ」の発展的研究」(2021〜2025年度)を引き継いで、ポジショナリティを多角的に研究するものです。ポジショナリティについての科研も3期目となり、研究参加者は代表者と分担者12名、研究協力者6名の計18名。北海道から沖縄までと米国のメンバーからなり、専門分野も社会学を中心に、哲学、政治学、言語学、文化人類学など多岐にわたる領域からポジショナリティに関心を持つ研究者が集まって研究を行っています。
ポジショナリティは、集団に属することで生じる個人の政治的位置性を表す言葉で、集団的利害の分配や権力関係などが個人間の関係において再生産される状況を分析する概念です。たとえば性差(ジェンダー)や人種・民族問題、障がい者問題、性暴力(および被害者支援)、などの様々な社会的関係において注目されています。
3期目となる本研究では、ポジショナリティの違いがもたらす事実の解釈への違いや、マジョリティ側に存在する特権などに焦点を当てて研究を行います。たとえば同じ差別的現象を目の前に、被抑圧者は差別と認識して抗議し、抑圧者は条件闘争のための交渉カードなどと認識する齟齬がなぜ発生するのか。被抑圧者は常に集団と結び付けられて行為が解釈されるのに、抑圧者は自分を集団の利害とは切り離された公正で自立した個人と認識する特権に無自覚なのはなぜか。などを、ポジショナリティを検討することから、ジェンダー、沖縄と日本の関係、多文化社会の諸相、障がい者、先住民、などの領域、さらにはトルコやアフリカといった国外の事例も併せて総合的に分析します。
これらの研究は事例調査やインタビューなどを通じて行いますが、これまで私たちの研究グループでは、日本国内で2回、韓国で1回の国際比較アンケート調査も行っており、定量的手法による継続調査も実施します。これらの成果や知見は、参加メンバー個人の論文や著書のほか、国内・国際学会でのポジショナリティ関連セッションの立ち上げ、沖縄と東京(大妻)でのシンポジウム、報告書作成、研究グループとしての書籍刊行といった形で社会へ還元します。また大学院生やODなど若手研究者に対して、ポジショナリティの議論と研究の機会を提供するべく準備を進めています。