
No.26
細谷 夏実
社会情報学部環境情報学専攻 教授


自然の中の生きものなどを直接観察することは、子どもたちの学びにおいても重要な要素です。さらに日常では見られない「ミクロの世界」を対象とした観察であれば、多くの新たな発見を通して、子どもたちの自然への好奇心が刺激されるのではと考えています。しかし、学校現場などで使われている従来型の生物顕微鏡を用いて観察を行うためには、顕微鏡各部の設定や調節、観察試料のセット、ピント合わせに至るまで操作に慣れることが必要で、教員をはじめとする大人の指導も欠かせません。また、小学校においては顕微鏡の設置台数が限られており、1台を一人で占有できず、観察に待ち時間が必要といった課題もあります。
こうした現況に鑑み、私たちは以前から「モバイル顕微鏡」に注目し、自身の研究主題である海洋教育の実践現場で活用を試みてきました(基盤研究(C) JP23K02400)。モバイル顕微鏡とは、デジタル端末のカメラ部分に装着して使用する小さな観察用機器です。現在学校現場には、文部科学省のGIGAスクール構想の推進により、一人1台のデジタル端末(タブレット)が導入されています。このタブレットに、クリップで簡単に装着できるタイプのモバイル顕微鏡を取り付けることで、タブレットが簡易型の顕微鏡に早変わりします。また、モバイル顕微鏡は、観察像を端末の画面で見ることができるため、複数の児童生徒による同時観察が可能で、観察像を協働学習の題材とすることもできます。私たちが実際に海洋教育の現場で活用した結果、子どもたちはクリップタイプのモバイル顕微鏡を自身でセットし、観察、画像保存などを行っていました。また、端末の画面で各自の観察状況を把握できるため、教員の指導上の負担が大きく軽減できることも明らかになりました。
このような背景の下、本研究では、モバイル顕微鏡の活用の場を小学校理科の単元全般に広げることを目指します。モバイル顕微鏡は観察までの操作が簡単なだけでなく、一般の教室、そして野外など、タブレットを持参できる場所ならどこででも顕微鏡観察が実施可能になります。このようなモバイル顕微鏡の特性を活かし、昆虫のからだのつくり、メダカの発生などといった生命分野はもとより、観察対象を粒子や地球分野の題材、さらには野外での観察などに広げることを目標にし、具体的な実践例を検証しながら創出していくことを目指します。
モバイル顕微鏡の特性を活かした簡便な顕微鏡観察実践の提案を通して、子どもたちの理科の学びが確実に深まるものと考えています。