研究課題
科研費

再⽣可能エネルギーとモビリティの効率的接続に関する制度設計の経済学的研究

研究代表者

荒川 潔

社会情報学部 教授

研究種目
基盤研究(C)
研究期間
(年度)
2023年(令和5年)2026年(令和8年)
荒川 潔

 

 近年、地球温暖化や電力需給逼迫などのため、再生可能エネルギーを活用した電力レジリエンスの強化が課題となっている。そのため、住宅やオフィスなどでの太陽光発電(Photovoltaics、以下PV)や蓄電池、電気自動車(Battery electric vehicle、以下BEV)などの分散型電源を活用した電力の自家消費の普及と、再生可能エネルギー由来の電力を有効活用した環境負荷の低いモビリティとの両立が求められている。
 消費者が将来よりも現在の費用を重視する場合、省エネルギー製品の普及は進まない。そのような状況をAllcott and Wozny (2014) はエネルギー・パラドックスと呼び、将来評価パラメータによる分析手法を提案した。例えば、欧米の自動車市場はエネルギー・パラドックスの状況にあり(Grigolon et al., 2018)、購入時の補助金が消費者の車種選択に強い影響を与える。一方、Arakawa (2022)は日本の自動車市場の消費者は現在よりも将来の費用を重視するため、維持に関する税制が環境対応車の普及に強い影響を与えることを明らかにしている。このように省エネルギー製品の需要構造は国や文化によって異なると考えられるため、将来評価パラメータによる分析は税制や補助金、料金体系に関する政策立案に重要な情報を与える。
 本研究では、PVと蓄電池、BEVを統合したシステムの需要がエネルギー・パラドックスの状況にあるのかどうかに着目し、エネルギー消費効率の改善や環境負荷の低減を目的としたPVと蓄電池、BEVを統合したシステムの普及を促進する税制や料金体系、規制とは何かを解明する。その際、消費者が現在と将来の費用をどのように評価するのかに着目し、導入段階の補助金と運用段階の税制のどちらが普及に効果的なのかを実証的に分析する。そして、長期的な視点に立った普及政策の効果を反実仮想シミュレーションにより検証する。本研究の具体的な課題は、(1) 社会的相互作用を考慮したPV・蓄電システムの需要構造の解明、 (2) 災害リスクを考慮したBEVとPVシステムとの接続に関する需要構造の解明、(3) PV・蓄電システムと接続したBEV充電インフラの効率的整備のための税制や補助金の解明、である。
 現在、内閣府などが推進する情報通信技術を活用して都市や地域の機能やサービスの効率化を図るスマートシティ構想やトヨタ自動車が建設予定のウーブンシティでは、エネルギーとモビリティの効率化と両立が課題となっている。本研究で得られる結論は、そのようなプロジェクトの費用対効果や採算性の分析などに寄与することが期待できる。

 

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