研究課題
科研費

⽶粒内部の糊化の可視化・定量化に基づく新しい⽶飯評価⽅法の確⽴と⾷感制御への活⽤

研究代表者

大田原 美保

家政学部 教授

研究種目
若手研究
研究期間
(年度)
2023年(令和5年)2025年(令和7年)
大田原 美保

 

 もちもち,しゃっきり,硬め,やわからめなど,米飯の食感は美味しさを決める重要な因子で,炊飯中の澱粉の糊化状態が大きく関与します。糊化とは,規則正しく並んでいる澱粉の分子が加水と加熱により構造が壊れ,糊状になることです。糊化により,硬くて消化性が悪かった米は水分を含み,消化性が良くて適度にやわらかく,弾力のある食感になります。炊飯による澱粉の糊化は,米の外周から内部に向かって進行するため,炊飯過程の糊化状態は米粒内部で均一ではありません。品種や精米歩合の違いなどの米の種類,加熱や調味などの各種炊飯条件によっても糊化の進行は異なり,米飯の食感の違いとなって現れます。米の利用拡大に向けて多くの品種が生み出されている今日,品種ごとに,また調理品ごとに最適な炊飯条件を決定するためには,粒内部の糊化の進行や糊化の不均一さを把握するとともに,糊化状態と食感の関係を解明することが求められています。
 しかし,従来の糊化状態の評価は粒全体の平均的な糊化の程度を測定する方法がほとんどで,粒内分布という視点から捉える方法はありませんでした。筆者はこれまでに米飯の粒内部の情報を得るための新たな評価方法(圧縮米飯粒法)を考案しました。本方法は,飯一粒を機器で厚さ0.1 mmに圧縮した米飯粒プレパラートを作製した後,一定条件下での顕微鏡撮影により画像を取得し,画像解析によって透明性の差異情報を得て,粒内部の性状の可視化と定量化を行う一連の手法です。これは,白く不透明な米が炊飯により透明感のある飯になり,その後の保存(冷蔵)によって透明感が失われていく変化が澱粉の糊化・老化を反映するとの推測に基づいています。これまでに,炊飯後の保存による米飯の変化,すなわち米飯の老化の把握に本手法を適用できることを示し,粒内部の透明性の低下が食感変化と対応することを明らかにしました。
 今回の研究課題ではこの圧縮米飯粒法を発展させ,糊化の程度と相関性の高い画像解析条件を見出すことで,把握が甚だ困難であった米粒内の糊化の進行や不均一さなど,炊飯過程から炊飯後までの一連の変化を可視化・定量化する新しい方法の確立を目指します。さらに,本方法で取得した糊化情報と米飯食感の関係を解明し,家庭内外で求められる各種米飯の炊飯条件の最適化を試みます。本研究は,米粒内部の糊化状態の視覚的・定量的情報に基づいた米飯食感の制御を可能とするもので,食品開発研究における米飯評価法の新たな基盤となると考えています。

 

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