研究課題
科研費

⾼齢者の下部尿路症状を予測する遂⾏機能評価と介⼊法の開発

研究代表者

原野 かおり

人間関係学部 教授

研究種目
基盤研究(C)
研究期間
(年度)
2023年(令和5年)2027年(令和9年)
原野かおり

 

 人は幼児期に排泄機能を獲得し、以降自身のタイミングと方法で排泄を行っており、最期まで自立していたいと望んでいます。しかし、加齢、疾患、障害等によって一度獲得した排泄の自立継続が困難となった場合、自身の尊厳の維持ができにくくなることに加え、介護負担の増大にもつながることがあります。排泄の一連の動作は、尿意・便意の知覚、トイレへの移動、便器の認知、脱衣、排泄、トイレットペーパー等での清拭、後始末、着衣、元の場所に戻るという複合動作です。これら複合動作の自立を説明する要因(条件)は、運動機能を反映する「移乗」と「歩行」、手指の巧緻機能を反映する「紐を結ぶことができる」と「小さなボタンのかけ外し」、認知機能を反映する「物品の想起ができる」の5因子が排泄自立のアセスメントや予測に重要であることを明らかにしました。
 しかしながら、前記5因子が自立であり、排泄に支障をきたすような疾患や障害等がないにもかかわらず非自立である高齢者が一定数存在することがわかりました。そこで、非自立の要因を探るため、遂行機能と排泄機能の関連性に着目して、2016年~2019年の基盤研究C:高齢者の遂行機能に着目した排泄自立介入プログラムの開発に取り組みました。その結果、遂行機能検査(Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome:BADS)の下位検査の一部が下部尿路症状(Lower Urinary Tract Symptoms:LUTS)の症状を検出又は予測可能なことが示唆されました。また、介入プログラムの根拠を明らかにするため、LUTSと関連する脳領域の同定するための調査を継続していますが、標本数の不足のため現時点で十分な統計的水準を満たす結果を得ていません。
 そこで、今年度からの研究では、一般高齢者や要介護者の排泄に係る自立支援にとって有益な知見を見出すと同時に、介護福祉士を含めた専門職間や学問間の知識や技術の深化をねらいに、自立支援介護に役立つLUTSの予測や評価ツール・介入法の開発・適用を目的に、①LUTSを予測する遂行機能評価の追検討と地域高齢者の実態調査、➁MRIによる脳画像解析によるLUTSの高次神経基盤の検討、③排泄自立に向けた介入プログラムの作成および介入法の検証を計画しています。

 

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